スタッドレスは溝が残っていても5年
— 履き替え時期と選び方の現場判断
スタッドレスの相談でいちばん多いのが「まだ溝があるから、今シーズンも大丈夫ですよね」という確認です。溝があることと、効くことは別なので、そこを中心に書きます。
履き替えは11月末から12月中旬
当店のある三重県では、11月末から12月中旬ごろの交換をお勧めしています。
ただしこれは目安でしかありません。同じ県内でも、山間部と平野部では降る時期も量もまったく違います。ですので実際はお客さまの行動範囲次第です。これは三重に限らず、全国どこを見ても同じことが言えます。
とくに気をつけたいのが、急な遠出や、普段通らない道を走る予定があるときです。山間部では急な積雪や凍結があり得ます。生活圏に雪が降らなくても、行った先で降っていれば同じことです。早いに越したことはありません。
「もったいないから遅らせる」が、いちばんもったいない
スタッドレスの消耗を抑えたくて、交換をぎりぎりまで遅らせる方がいます。気持ちは分かるのですが、冬季の走行距離にもよるものの、遅らせ続けても使い切る前に古くなってしまうことが多いのです。
後述のとおりスタッドレスには溝とは別に寿命があります。温存しても、結局は年数で買い替えになります。それなら早めに履いて、安全な期間を長く取るほうが得だと考えています。
溝が残っていても、5年で交換を勧めています
運転の慣れ不慣れに関わらず、5年程度での交換をお勧めしています。
スタッドレスが効く仕組みは、ゴムの長い足が凍結路面に食いつくことです。ですから溝が無い=滑るに直結します。夏タイヤのように「浅くなってきたな」で済む話ではありません。
そしてここが誤解されやすいのですが、スタッドレスはもともと溝が深く作られています。そのため見た目には「まだ十分ある」と映りがちです。
減りを見るポイントは2つ。混同すると判断を誤ります
スタッドレスには性格の違う2つの摩耗の目印があります。ここを取り違えている方がとても多いです。
プラットホーム … スタッドレス特有の目印で、新品から溝が50%摩耗すると出てきます。これが出たら冬タイヤとしての性能の限界です。側面の矢印マークの延長線上(4か所)にあります。
スリップサイン … タイヤ全般に共通する目印で、残り溝が 1.6mm になると出てきます。これが出たタイヤは法律上そもそも使えません。側面の三角マークの延長線上にあります。
大事なのは順番です。プラットホームのほうが先に出ます。つまりスリップサインがまだ出ていなくても、プラットホームが出ていれば、冬タイヤとしてはすでに終わっています。
「スリップサインは出ていないから、まだ大丈夫」——これが典型的な見間違いです。スタッドレスとして使うなら、見るべきはプラットホームのほうだとお考えください。(2つの目印の位置と基準は ブリヂストンの解説が分かりやすいです)
点検のときにお見せしていますので、ご自分の判断に自信がないときは、溝の残りとあわせて製造年も一緒に見てもらってください。5年という目安と、この2つの目印。どちらか早いほうが替えどきです。
保管とヒビ
保管は冷暗所で、直射日光を避けるのがベストです。特別な設備は要りませんが、屋外に置きっぱなしで日光と雨風に当て続けるのは避けてください。
持ち込まれた時点でサイドウォールにヒビが入っている場合は、使用不可としてご案内しています。無理に使うとバーストのリスクが高いためです。溝がどれだけ残っていても、ここは例外にできません。
ヒビは保管環境と年数で出ます。溝の残量とは別の軸なので、シーズン前に一度、側面まで見ておくことをお勧めします。
インチダウンの上限
スタッドレスは純正より小さいインチで組むことが多いので、よく聞かれます。
- 基本的に1インチまでが目安です
- 軽自動車は14インチまで。サマータイヤが14インチなら、無理に下げる必要は感じません
- 13インチはインチのわりに金額が高めなこともあります。下げれば安くなるとは限りません
そして重要なのが、現行車ではインチダウンを受け付けないことも多い点です。ブレーキの大型化や車両側の部品との干渉で、物理的に入らないことがあります。この件は 前の車のホイールが次の車で使えない に詳しく書きました。事前の確認は必須です。
候補サイズの当たりをつけるには、車種別タイヤサイズページに1インチ下げたときの候補を載せてあります。外径差は TireDiff で確認できます。ただし数値が合っていても、現車に当ててみるまで確定しません。
中古スタッドレスとアジアンタイヤ
どちらも当店ではよく交換作業をしています。実感を書きます。
中古は「製造年次第」
中古は絶対にダメとまでは言いません。判断はほぼ製造年で決まります。1〜2年落ちであれば問題ないと思います。
ただし、中古の国産を買うくらいなら、新品のアジアンタイヤのほうが安心な部分もあります。前の使われ方も保管状況も分からない中古より、少なくとも新品であることが分かっているほうが読めるからです。
アジアンタイヤは「どこで開発されたか」で見る
アジアンタイヤや海外製スタッドレスを選ぶときの基準は、価格でもブランドでもなく、日本での使用を想定して開発されたタイヤかどうかです。
理由は路面が違うからです。日本の冬の路面は、ガチガチに凍った凍結路面が多いのに対し、雪がしっかり残るような地域・国で開発されたタイヤは、そもそも想定している使用条件が違います。雪上で優秀でも、凍結路で同じように効くとは限りません。
その意味で、国内で開発テストを行っているアジアンスタッドレスは、安価で性能も十分という印象があります。製品ページやメーカーサイトに、日本国内でのテストについて書かれているかどうかは、ひとつの判断材料になります。
まとめ
- 三重では11月末〜12月中旬を目安に。ただし山間部と平野部で違うので、最後は行動範囲次第
- 普段通らない道を走る予定があるなら早めに。生活圏に降らなくても行った先で降る
- 温存しても使い切る前に古くなる。遅らせるほど得、にはならない
- 溝が残っていても5年程度で交換を推奨。効く仕組みがゴムの足なので溝が無い=滑る
- もともと溝が深いので見た目で判断しない。目印は2つある
プラットホーム(溝が50%摩耗・矢印の延長線上4か所)=冬性能の限界/ スリップサイン(残り1.6mm・三角マークの延長線上)=法律上の限界 - 先に出るのはプラットホーム。「スリップサインが出ていないから大丈夫」は典型的な見間違い
- サイドウォールにヒビがあれば使用不可。バーストのリスク。溝の残量とは別の軸
- インチダウンは1インチまで/軽は14インチまで。13インチは割高なことも
- 現行車はインチダウンを受け付けないことも多いので事前確認を
- 中古は製造年次第(1〜2年落ちなら可)。中古国産より新品アジアンのほうが読めることも
- アジアンは日本での使用を想定して開発されたものかで選ぶ。日本の冬は凍結路面が多い
本記事の内容は、実際の作業経験にもとづく個別の判断です。交換時期の目安は三重県での実感であり、地域・標高・行動範囲によって適切な時期は変わります。交換年数やインチダウンの可否も、使用条件・保管状況・車種によって異なります。実際の判断は必ず現車とタイヤの状態をご確認のうえ、整備工場にご相談ください。