車検で落ちるのはどこか、費用がなぜズレるのか
— 整備の現場から
車検の費用は、大きく法定費用と整備費用に分かれます。前者は金額が決まっていて、どこに出しても変わりません。金額が動くのは後者です。
CALDRIVE の TaxCalc で計算できるのは、重量税・自賠責保険料・印紙代といった法定費用までです。実際の請求額との差は整備費用で、そこは車の状態でしか決まりません。この記事では、その決まらない部分について書きます。
ノーマル車で落ちるのは、まずヘッドライト
カスタムしていない車を前提にすると、最も多い不合格はヘッドライトの光量不足です。ほかを大きく引き離しています。
とくに平成あたりの年式で、ヘッドライトの曇りや傷が目立つ車は、そのまま持ち込んでも通らないことが多く、車検前に磨きを入れないと受からないのが実際のところです。レンズが白く濁っていると光が散ってしまい、規定の明るさが出ません。
ご自分の車のヘッドライトが黄ばんでいる、白く曇っている、という自覚があるなら、車検の前に磨きを見込んでおいてください。当日に「光量が出ないので磨きます」となると、その分の費用と時間が上乗せになります。
そのほか、多い順に
- 灯火類の切れ … 球切れ。自分では気づきにくい場所もあります
- ブーツの破れ … ドライブシャフトブーツなど。ゴム部品の経年劣化です
- タイヤの摩耗 … 残り溝。片減りしていることもあります
- ブレーキパッドの残量不足
いずれも経年で必ず来るもので、特別な乗り方をしていなくても順番に出てきます。年式が上がるほど、この4つのどれかには当たると思っておいたほうが現実的です。
カスタム車で引っかかる定番
車高(最低地上高)
下げている車でいちばん多いのがこれです。マフラーやフレームなど、接地部以外の最も低い部分で 9cm が必要で、ここが足りないケースが多くあります。
ややこしいのは、エアロ類は地上高の測定対象外になることもある点です。「バンパー下が低いから即アウト」とは限りません。とはいえ判断は現車を測ってからになります。
なお、キャンバーが付いた車でツライチを狙ったホイールのまま車検を受けようとするのは、そもそも無理があります。この件は オフセット計算はツライチを保証しない に書きました。車検のときは車検用のホイールに履き替えるか、車高を上げるのが結局いちばん早く済みます。
マフラー
車検対応品であることは必須です。そのうえで重要なのが、それを証明できるかどうか。証明できない場合は受からないことがほとんどです。
社外マフラーを付けるなら、認証プレートや保安基準適合の書類を必ず保管しておいてください。中古で買った車に社外マフラーが付いていて、書類が引き継がれていない、というのがいちばん困るパターンです。
灯火類のカスタム
意外に多いのがここです。
- ドアミラーウインカーをシーケンシャル(流れるタイプ)に変えている
- リフレクターを LED 内蔵タイプに変えている
これらは通りません。見た目の変更として軽い気持ちで交換されることが多いのですが、灯火類は保安基準がはっきり決まっている領域です。
カスタムは人によって本当に多種多様なので、最終的にはその場で都度指摘することになります。「これは大丈夫ですか」と聞いていただければ、預かる前にお答えできることも多いです。
見積もりと最終請求が、なぜズレるのか
ここがいちばん知りたい部分だと思うので、正直に書きます。
見積もりの時点では、見えていない箇所がある
見積もりは、車をジャッキアップせずに簡易的に出すこともあります。その場合、下回りは十分に見えていません。マフラーに欠陥があっても気づけないことがあります。
また、ドラムブレーキは開けるまで残量が見えません。ディスクブレーキなら外から覗いて残りを確認できますが、ドラムはそうはいかないため、分解してはじめて「もう無い」と分かることがあります。
預かってから分かることもある
車両を預かって場内を動かしたときに、違和感で気づくこともあります。乗ってみないと出てこない異音や引っかかりです。そこから追加整備が出るケースがあります。
つまり、見積もりは「その時点で見えている範囲の金額」です。意図的に安く見せているわけではなく、見えない箇所が物理的に存在します。追加が出る可能性がある箇所を、見積もりの段階で聞いておくと安心です。
「全部やる」と高額になる
走行距離と年式をベースに、推奨される消耗部品の見積もりを出すことも可能です。ただしそれを全部入れると請求額はかなり高額になります。
ですので実際には、いま必要なもの・次回まで持ちそうなもの・様子を見るもの、と優先順位をつけていくことになります。「予算はこのくらいで」と先に言っていただくほうが、こちらも組み立てやすいです。
よくある誤解
車検に通った=万全、ではありません
車検は「国が定めた基準に、その日の段階で適合しているかどうか」を見ているものです。取得した翌日に不具合が出ることもあります。車検を受けたからしばらく安心、と考えず、日常的なメンテナンスは別に必要だとお考えください。
継続車検は「2か月前」から受けられます
以前は有効期間の満了日の1か月前からでしたが、2025年4月1日から2か月前に拡大されました(国土交通省の省令改正)。残っている有効期間を捨てずに早めに受けられます。
車検は年度末に集中して混み合います。特に年度末が満了日の方は、余裕をもって依頼してください。直前になるほど選択肢が減ります。
法定費用に、お店による差はありません
重量税・自賠責保険料・印紙代は車種別に決まった金額です。どこで受けても同じで、ここで差はつきません。TaxCalc で条件を入れれば、この部分の目安が出せます。
自賠責が「25か月」でも間違いではありません
車検が切れている場合、自賠責保険を25か月で取得することが多いです。24か月ではないので不審に思われることがありますが、これは間違いではありません。
車検前に、自分でできること
特別な点検は要りません。ひとつだけお願いしたいのは、普段の運転で気になった点を覚えておいていただくことです。
- コトコト、ゴトゴトという音がする
- ブレーキでキーキー鳴る
- エンジンをかけたときにキュルキュル音がする
こうした情報があると、ヒアリングの段階で要修理箇所を絞り込めることがあります。絞り込めれば、修理費用をあらかじめ概算でお伝えすることもできます。
「なんとなく変な音がする気がする」程度で構いません。曖昧でも、伝えていただくほうが精度が上がります。いつ・どんなときに・どのあたりから、が分かればなお良いです。
まとめ
- ノーマル車で最も多い不合格はヘッドライトの光量不足。平成あたりの年式は事前の磨きを見込んでおく
- 次いで灯火類の切れ・ブーツの破れ・タイヤの摩耗・ブレーキパッドの残量不足
- カスタム車は最低地上高9cm、車検対応マフラーであることの証明、灯火類(シーケンシャル化・LED内蔵リフレクター)が定番
- 見積もりはその時点で見えている範囲の金額。ジャッキアップ前、ドラムブレーキ内部は見えない
- 推奨部品を全部入れると高額になる。予算を先に伝えたほうが組み立てやすい
- 車検=万全ではない。その日の基準適合を見ているだけ
- 継続車検は2か月前から(2025年4月1日〜)。年度末は特に早めに
- 法定費用に店による差はない。自賠責25か月も間違いではない
- 普段気になった音を覚えておくと、事前に概算を出せることがある
本記事の内容は、実際の作業経験にもとづく個別の事例です。車種・年式・状態によって結果は変わります。最低地上高 9cm は道路運送車両の保安基準(細目告示 第85条)によるもので、CALDRIVE 内の法令数値と同じ一次情報です。継続検査の受検可能期間の拡大は 2025年4月1日 施行の省令改正によるもので、2026年8月14日時点の情報です。制度は改正されることがあります。判断は必ず現車と最新の公的情報でご確認ください。